THE W 2025 粗品の「酷評」は暴言か、救済か?1000万円の重みと審査員の責任について
また今年も、この季節がやってきて、そして嵐のように過ぎ去っていきました。『THE W 2025』。
もはや年末の風物詩とも言えるこの大会ですが、今年一番のハイライトは、優勝者でもファイナリストのネタでもなく、審査員席に座った粗品さんの**「あの発言」**だったかもしれません。
「賞金1000万円に値するネタじゃない。お笑いとしておもんない」
生放送でこの言葉が放たれた瞬間、スタジオの空気が凍りついたのが画面越しにも伝わってきました。ネット上では「言い過ぎだ」「パワハラだ」という批判と、「よく言った」「これが本音だ」という賛同が入り乱れ、まさに賛否両論の渦中にあります。
ただ、長年お笑い賞レースを追いかけてきた身として、あえて言わせてください。 今年のTHE Wには、この「劇薬」が必要だったのではないか、と。
「優しい世界」の限界
THE Wは、女性芸人の活躍の場を広げるという素晴らしいコンセプトを持っています。しかし、回を重ねるごとに「多様性」や「頑張り」が評価されがちになり、純粋な「笑いの爆発力」での審査基準が曖昧になっていた側面は否めません。
視聴者がなんとなく感じていた「これで1000万円…?」という違和感。 そこに、M-1王者であり、現役バリバリのプレイヤーである粗品さんが、誰よりもシビアな「お笑いの物差し」を突きつけました。
彼は、演者の背景やキャラクター(頑張り)を一旦無視し、**「そのネタが面白いか、面白くないか」**だけでジャッジしたのです。これはある種、演者に対する最大のリスペクトでもあります。「女性だから」というフィルターを外し、一人の芸人として対等に殴り合った結果の言葉だったのではないでしょうか。
1000万円という「重み」
彼が口にした「1000万円に値しない」という言葉。これこそが本質です。 M-1やキングオブコントの王者が、どれだけの屍を乗り越えてその座を掴んでいるかを知っている彼だからこそ、その賞金の重さを誰よりも理解しています。
もし、レベルに達していないネタに対して、審査員全員が「面白かったですね、これからも頑張ってください」と濁して1000万円を渡してしまったらどうなるか。それは大会の権威を下げ、ひいては過去の優勝者や、本気で人生を賭けている他の芸人たちへの冒涜にもなりかねません。
嫌われ役を買って出た「愛」
もちろん、言い方には賛否があるでしょう。テレビショーとしてもう少しオブラートに包むべきだったという意見もごもっともです。
しかし、誰かが「王様は裸だ」と言わなければ、そのコンテンツは緩やかに衰退していきます。あの冷徹なコメントは、THE Wという大会を「単なるお祭り」から「真剣勝負の場」へと引き戻すための、彼なりの強烈な荒療治だったように思えてなりません。
来年、この言葉に奮起した出場者たちが、粗品さんですら「参った」と言わせるようなネタを持ってくること。それこそが、今回の一件の本当の答え合わせになるはずです。
今回の騒動、皆さんはどう感じましたか? 単なる暴言と捉えるか、プロとしての矜持と捉えるか。それによって、お笑いの見方も少し変わってくるかもしれません。